図書情報室

父権制の崩壊あるいは指導者はもう来ない

08/ハ

橋本 治/著

朝日新聞出版

これまで世の中で「当たり前」とされてきた多くのことは、「男の論理」で片づけられてきた。別の言い方をすれば、世の中は男に都合のいいようにできていた。しかしそれらはすでに崩壊してきている。なぜなら、旧民法に規定されていた家父長制、男性が社会・経済的な権力を保証される仕組みが、戦後の民法改正によって制度的な根拠を失い、少しずつ色あせてきているからだ、と筆者は語る。
本書は、都知事選の変遷、ハリウッド映画の分析、学生運動の成り立ちから政治家のスキャンダルなど、誰もが知っている事例を歴史的にひもときながら、これまでの「当たり前」が失効するさまを具体的に説くことで、ひとりの人間に権力を預けて「指導者」とすることを止め、成熟した関係のあり方を検討すべきではと提案している。

ここからセクハラ! アウトがわからない男、もう我慢しない女

74/ム

牟田和恵/著

集英社

「セクハラ」問題は、メディアに数多く取り上げられ、「セクハラ」という言葉の持つ意味を誰もが共通認識できるようになってきた。
 セクハラの根源にあるのは「勘違い」と「無自覚に行われる女性蔑視」。それは形を変え、どこにでも現れるものだと筆者は言う。
 本書では、世の中の様々な場面のセクハラを取り上げ、時にマンガも挿入し、セクハラの根源がわからない「アウトな男」の問題点を指摘している。それと同時に、どこまでがセクハラなのか?わからないから声を上げられないでいる女性たちにも、セクハラに気づかせ「我慢しない女」になって声を上げていいと伝えている。
 「セクハラ」に対する自分の意識を本書を読んで確認してみませんか?

飢える私  ままならない心と体

05/ゲ

ロクサーヌ・ゲイ/著 野中モモ/訳

亜紀書房

スレンダーな体形がもてはやされ、体重を標準(かそれ以下)に保てないことは、美しくなく、自己管理できない人と評価されがちである。そのような価値観に挑みかかるように食べて食べて食べ続け、その体重が最大で260㎏に至る日々を、"私の体と私の飢えについての回顧録"として書き記したエッセイである。
レイプで傷つけられた12歳の時以来、自分自身を守るための要塞を築いた様を淡々と語っているように見えて、その時々の激しい心の揺れが行間からにじみ出る。恐怖、不安、怒り、飢え、不器用な愛情、回復。様々な感情が、体を通して行き来する。
そして、何と、心と体はままならないものかと思い知るのだ。

科学の女性差別とたたかう 脳科学から人類の進化史まで

05/サ

アンジェラ・サイニー/著 東郷えりか/訳

作品社

今日、世界各地の女性が自由と平等を求めて声を上げる中で、またもやそれを押し戻そうと激しい努力がなされている。その根拠に科学が利用されている。客観的、合理的な知識体系のはずの「科学」が、過去にどれだけ女性に不公平な仕打ちをしていたかを考慮してほしいと著者は訴え、非科学的な科学をひとつひとつ丁寧に解説していく。例えば、数学的能力が生物学的な性差と思われたものが、実は文化的な差異であったという事例が紹介されている。
イギリスの実力派科学ジャーナリストが、神経科学、心理学、医学、人類学、進化生物学などさまざまな分野を取材し、19世紀から現代までの科学史や最新の研究成果を徹底検証し、まったく新しい女性像を明らかにする。原書は高い評価を得ており、英国物理学会誌で2017年のブック・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。

レッド あかくてあおいクレヨンのはなし

E/ホ

マイケル・ホール/著 上田妙子/訳

子どもの未来社

レッドは、自身もそして周囲も、赤いクレヨンだと思っているが、本当は青い。赤を描くことができず、混ざり合っても期待された色が表現できない。そんなレッドが、本当の自分の色を発見する。
だれもがそれぞれの色を持っていること、そしてラベルにしばられずに自分の色を見つけてほしいというメッセージが込められたこの本は、アメリカ図書館協会のレインボーリスト(LGBTの青少年向け推薦図書)にも選ばれている。

なぜ共働きも専業もしんどいのか 主婦がいないと回らない構造

57/ナ

中野 円佳/著

PHP研究所

2016年の女性活躍推進法の施行から3年経過したが、「ワンオペ育児」という言葉が流行したように、「家事」、「育児」をしている女性に、単に「仕事」の負担を求めているだけと感じている人も少なくないのではないだろうか。
著者はその原因を、戦後の高度経済成長をもたらした、専業主婦の存在を前提とした働き方や、家庭や子育ての環境であるとし、それを「主婦がいないと回らない構造」と表現する。
この構造を変えるきっかけとして、著者はギグ・エコノミー(インターネットを通じて単発の仕事を請け負う働き方)などの多様な働き方に兆しを見出し、後輩や子どもたちの世代に向けての制度整備を提唱している。