図書情報室

到来する女たち ―石牟礼道子・中村きい子・森崎和江の思想文学―

到来する女たち ―石牟礼道子・中村きい子・森崎和江の思想文学―

108/ワ

渡邊英理/著

書肆侃侃房

九州に縁のある三人の女たち-石牟礼道子・中村きい子・森崎和江-は雑誌『サークル村』に集い、資本主義と家父長制の二重の抑圧の中で自らの言葉を書き綴ることを始めた。それは女の思想のはじまり、わたしたちのフェミニズムのはじまりだった。本書は三人の表現を思想文学として読み解き、それぞれの個別活動の交差する地平を検討し、聞書きという受動と能動のいずれもがたたみ込まれた行為の可能性を追求している。
孤立させられ沈黙を強いられてきた女たちの声は不揃いのまま結びあい「わたし」が「わたしたち」になる。余韻ある結びの一文まで引き込まれ、読み手の心に大きな力が到来する一冊である。

リプロダクティブ・ジャスティス ―交差性から読み解く性と生殖・再生産の歴史―

リプロダクティブ・ジャスティス ―交差性から読み解く性と生殖・再生産の歴史―

81/ロ

ロレッタ・ロス、リッキー・ソリンジャー/著

人文書院

「産む/産まない」を選択する権利は、あらゆる人に保障されるべきである。しかし、すべての人がその権利を行使できているのだろうか。例えば、貧困を理由に避妊や中絶をせざるを得ない女性は主体的に“産まない”選択をしていると言えるのだろうか。本書はアメリカの人口政策、裁判の歴史を元に、人種、階級、ジェンダー、障害、国籍、セクシュアリティなどの要素が交差する地点で、家族を持つ権利の抑圧と、生殖をめぐる不平等がどのように生まれてきたのか明らかにする。
生殖を「自己責任」や「個人の選択」として語る言説に疑問をもつ読者に、本書はその前提を問い直す確かな視座を与えてくれる。

私のからだは私のもの

私のからだは私のもの

74/ヒ

平井美津子/著

高文研

本書は、日本社会に根強く残る「レイプ神話」が、被害者の声をどれほど奪い、追い詰めてきたのかをわかりやすく示している。若い世代ほど神話を受け入れやすいという調査や、性暴力を軽視してきた文化や教育の不足が紹介され、問題が個人ではなく社会全体の構造にあることが浮かび上がる。性売買の歴史や日本軍「慰安婦」制度、教員や政治家による性暴力の事例などを通し、被害者が声を上げるまでの不安や迷いにも丁寧に寄り添う視点が印象的だ。私たちに求められるのは、被害を疑わず、声を受け止め、沈黙を強いる空気を変えていく姿勢である。「私のからだは私のもの」と誰もが言える社会の実現に向け、重要な気づきを与えてくれる一冊だ。

ことばに潜むジェンダー —学校・本・テレビ・日常のなかのもやもや—

ことばに潜むジェンダー —学校・本・テレビ・日常のなかのもやもや—

124/エ

遠藤織江/著

明石書店

従来の「女らしさ」「男らしさ」の規範意識やいろいろな分野での性差別意識を温存するものの一つに私たちの日常使っている「ことば」があると筆者は言う。小学校の教科書はジェンダーレスになってきているが、その教材を扱う教員や子供たちの家庭、取り巻く社会が変わらなければ、子どもたちには伝わらない。本書では、男女の呼称「さん」「くん」「ちゃん」に潜む問題点や、マンガの男女別のセリフの語尾の書き方やテレビでのジェンダーの表現など具体的な事例を示している。差別的であったり実情に合わなくなったことばを、自分達の表現したい内容を伴ったことばに選びなおし、探し続けていこうと伝えている。

多様で複雑な世界を、いまどう描くか-12人のマンガ家・イラストレーターの表現と思索の記録

多様で複雑な世界を、いまどう描くか-12人のマンガ家・イラストレーターの表現と思索の記録

15/タ

BNN編集部/編

ビー・エヌ・エヌ

人種やジェンダーなど、多様な価値観が交錯する今、「人が生きる世界をどう描くか」という問いは、表現する人にとっていっそう重く、複雑なテーマとなっている。
本書では、12人の漫画家・イラストレーターが、社会や他者と向き合いながら作品を生み出す過程を語り、そこに込められた粘り強い思索と探求の軌跡をたどる。巻末には識者による多角的な論考も収録され、表現と社会の関係をより深く理解する手がかりとなる。
多様な時代における創作の意味を考えたいすべての人に、静かに響く一冊。

TRUE Colors—境界線の上で—

TRUE Colors—境界線の上で—

YA/101/ト

神戸遙真、蒼沼洋人、いとうみく、鳥美山貴子、ひこ・田中/著

講談社

「女の子は将来ママになるもの」「女の子は甲子園に出られない」「元カレの好きな人は」「誰が家事をするのか」等、子どもたちの日常にある性にまつわるモヤモヤと、それに気づき、逃げずに向き合う姿が描かれるアンソロジーである。創作の世界であっても、現実とは地続きであり、世の中の多様性を知り、そこで起こる感情の動きを体験できる。
図書ラベルのYAはヤングアダルトの略で、大人と子どもの間、主に小学校高学年から中高生向けであるが、どなたでも。子どもの本などと思わず手に取ってみてほしい。