図書情報室
男はなぜ孤独死するのか ―男たちの成功の代償―
08/ジ
晶文社
“男性は女性に比べて自殺する率が高い”ことは、広く知られており、その要因の一つに“孤独”があげられている。浮かび上がってくるのは、社会的優位に立つがゆえの男性の脆弱性だ。
本書では、メンズ・ヘルスのエキスパートであり自殺研究の第一人者である著者が、自殺行動に関する科学的研究や心理学のエビデンスに基づき、なぜ、男性は孤独に陥りやすいのか、どうしたら孤独死を避けられるのかについて、ジェンダーに焦点をあてつつ考察している。
孤独は誰にでもやってくるが、孤独の格差は明らかに存在している。そこにジェンダーが作用しているとすれば、深刻な事態に陥る前にできることはたくさんありそうだ。
わたしたち、体育会系LGBTQです ―9人のアスリートが告白する「恋」と「勝負」と「生きづらさ」―
78/タ
集英社インターナショナル
日本のスポーツ界全体でLGBTQ当事者であることをカミングアウトしている数は少ない。その理由は、どこにあるのか。本書では、スポーツ界における性的マイノリティの人たちのこれまで世の中にほとんど届くことのなかった実体験や本音が語られ、日本のカミングアウトしづらい環境を浮き彫りにしていく。
LGBTQとスポーツのよりよい未来に向け、ジェンダーやセクシュアリティについて理解が深まり、性的マイノリティの人たちが活躍していることが当たり前になるよう、本書を通じて当事者の声に耳をすませ他人事でないことに気付いてほしい。
バトラー入門
05/フ
筑摩書房
ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』(90年初版)は現代フェミニズム思想を学ぶ多くの人が読もうと努力するが、難解ゆえに“読んだ気になっている”人が多いようだ。本作は『ジェンダー・トラブル』自体の理論を理解するのではなく、執筆された80~90年代当時のフェミニズム界隈での動きや、LGBTQA+コミュニティの空気感。それらからバトラーが置かれていた環境を知ることで、バトラーの思想を考察するのだ。それでも難解であることは変わりないのだが、著者のくだけた文体はまるでフレンドリーで頼もしい山岳ガイドのようで、やわらかい思考で解釈するのを手助けしてくれる。バトラーの思想に初めて触れる方におすすめの、まさに「入門本」だ。
たぶん私たち一生最強
101/コ
新潮社
著者は、『くたばれ地下アイドル』で2015年に「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞してデビューし、本作が二作目である。
息のあう同級生28歳の女性4人が、ルームシェアをして一生4人で過ごすことを決意する。失恋したり、転職したり、自分のセックスに不安を覚えたり、病気になったり、みんな人生イロイロあるけど、「もう十年も二十年もたてば、今時男女で結婚とか古くない?って感じの社会になって…制度も整って、今よりずっと私たちが明るく仲良く暮らしやすい感じになってるよ。」と、あっけらかんと言い放つ彼女達は最強だ。多くの選択肢の中から葛藤しながらも自分で選び、自分らしく生きる。彼女達の姿に、これからの自分の人生の視野が広くなり、自由を感じることだろう。
いばらの道の男の子たちへ ―ジェンダーレス時代の男の子育児論―
08/オ
光文社
現代の日本社会では、女の子には自分のために「自分らしく生きていい」というメッセージが伝えられるようになったのに対し、男の子にはどう対応すればいいのかについてほとんど議論されていない。
「トキシック・マスキュリニティ」とは、「有害な男らしさ」「自他を害する過剰な男らしさへの執着」という意味である。これからの未来を生きる男の子が、自分も他人も傷つけないような生き方ができるようになるために、親はどのように男の子と接すればよいのか?
「テレビやYouTubeから、子どもが男女に関する歪んだ価値観を刷り込まれないか」等の親たちのモヤモヤする思いに、著者たちが対談形式で答える。
女の国会
101/シ
幻冬舎
本書は、政治家を軸に、働く女性が直面する困難を描いたミステリー小説である。ここでは、典型的な男性優位の世界である政界における、女性たちの理不尽な経験が浮き彫りにされ、政治を志す女性にとっての様々な障壁がリアルに描かれている。
世界経済フォーラムが公表した「ジェンダー・ギャップ指数2024」の日本の順位は146か国中118位、依然として低く、その大きな原因が政治の分野における女性の少なさであることは、よく知られるようになった。
しかし、そのような状況は、男性を含むすべてのジェンダーの人々にとって、良い状態とは言い難い。だからこそ、この本を読んで共感してほしい。現状を変える力を持つために。