図書情報室
女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから
05/イ
ディスカヴァー・トゥエンティワン
本書は、“母娘関係、性教育、ジェンダー、SNSとの付き合い方、外見コンプレックス、いじめ、ダイエット”等、女の子を育てる上で大切にしたいことを、テーマとして扱っている。
残念なことに、この社会は女性というだけで理不尽な目にあい、傷つけられることが多々ある。娘を持つ著者は、「自身が抱く『女じゃなかったら、なかっただろうな』という痛みを娘には経験させたくない」と思い、まずは保護者ができることを知らねばと、多くの専門家や当事者等に話を聞き、女の子達を守るためにどのようなことが必要かを一緒に考えている。
娘を持つ母だけでなく、子どもを持つ保護者、また子どもに関わる様々な人たちに、手に取ってほしい一冊。
母親になって後悔してる、といえたなら ―語りはじめた日本の女性たち―
45/タ
新潮社
子ども中心の生活で自分の人生を生きられず、自分が何者かわからなくなった人、母親になった後悔を言えない人、自分が変わらなければと辛い気持ちを一人で抱え込む人は少なくない。本書を通して、後悔を語る母親たちに出会うことで、今「母である」ということに悩みを抱えている人が、共感したり、ヒントを得ながら、自分の生活を客観的に見つめるきっかけにしてほしい。
また、母親が直面する数々の壁には、社会全体で解決する問題もあれば、関わる人が捉え方や接し方を変えることで簡単になくなるものもある。社会で子育てを担っていくことは、一人一人が当事者になるということでもある。母親たちの声に何と答えるか、今、問いかけられている。
編むことは力 ―ひび割れた世界のなかで、私たちの生をつなぎあわせる―
69/ナ
岩波書店
編み物に限らず手芸全般が、「趣味(主に女性が嗜む)」の範疇を超える評価を得るのは困難だろう。そんな諦観を持ちつつ、しかし“力”というタイトルに惹かれて手に取った。
エコノミストであり相当な編み手でもある著者自身の編み物遍歴―幼少時の祖母との思い出や、大きなトラブルに見舞われた際にも編み物によって心を落ち着け、問題に対処してきた―といった個人的なエピソードとともに、表舞台ではなくても歴史の様々なシーンの中に必ず存在した編む女たちの姿が描き出される歴史書としても読むことができる。
編み物は、家族の衣生活を整える作業=家事であると同時に、フェミニズムや社会運動を支えるツールでもあったという。
確かに。記憶に新しいのは8年前、アメリカでのウィメンズ・マーチ(抗議デモ)の参加者たちが、揃ってピンクの猫耳ニット帽をかぶっていた光景だ。それは趣味でも家事でもない編み物であり、個人と政治や経済の結び目となり得る行為だったのだ。これは侮れない。
柚木麻子のドラマななめ読み!
15/ユ
フィルムアート社
本書は、著者が雑誌で連載していた2014年~2024年までのテレビドラマ評をまとめたものに、加筆修正を行ったものだ。
フジの「月9」やNHKの「朝ドラ」など、様々なドラマについてストーリーだけでなく、演じる俳優の魅力等についてもフェミニズムやLGBTQなどの視点も入れつつ広く、深く、分析している。
「番外編」では、著者が「推し」ていた有名俳優の性加害については横暴な父を持つ自身の家庭環境と照らし合わせ、原作の改変に起因するとされる作者の死に関してはドラマの制作側としての経験を持つ立場からそれぞれの視点で問題提起を行っている。
本書を読んで、好きだったドラマを見返したり、気になったドラマを見てみると、ジェンダーの視点からの新しい発見があるかも知れない。
女らしさの神話(上・下)
05/フ/1,2
岩波書店
1920~30年代に高等教育を受けた女性たちの多くが専業主婦となり、主婦/妻/母という女の役割を“演じている”ことに気づいた著者が、「女はこうあるべき」という概念がはらむ欺瞞、女性たちの不安や不満について研究・調査し、“The Feminine Mystique”を著したのが1963年である。賛否両論あったものの大反響を呼び、第二波フェミニズムの引き金となった。1965年に『新しい女性の創造』として抄訳され、日本の女性にも大いに影響を与えたが、今般新たに全訳されたのが本書である。
原著の出版から60年。アメリカも日本も、女性の生き方、社会の在り方は変わった。それなのに、本書には今も「私のこと」のように感じさせられる。いつになったら古典になるのだろうか。
オタク文化とフェミニズム
15/タ
青土社
「推し活」という言葉に物珍しさを感じなくなった昨今だが、多かれ少なかれ「好き」な人物、対象、作品の存在はどの人のなかにもあることだろう。そんな「好き」を爆発させ、自身の経済活動を推し活に全振りする“オタク”の存在は、近年めまぐるしく変化するマーケティング戦略に大きな影響を及ぼしている。本書は主にアイドルを取り巻く環境とファンダム文化を土台に、「推す側」「推される側」双方の労働課題、それに付随する性的消費・性暴力の問題を内包しつつも“推さずにはいられない”女性のオタク的消費行動が現代社会に及ぼす影響をフェミニズムの視点から考察する。女装男子や、女性の自立、オタク行動におけるケアの視点にも触れられている事にも注目したい。