図書情報室
多様で複雑な世界を、いまどう描くか-12人のマンガ家・イラストレーターの表現と思索の記録
15/タ
ビー・エヌ・エヌ
人種やジェンダーなど、多様な価値観が交錯する今、「人が生きる世界をどう描くか」という問いは、表現する人にとっていっそう重く、複雑なテーマとなっている。
本書では、12人の漫画家・イラストレーターが、社会や他者と向き合いながら作品を生み出す過程を語り、そこに込められた粘り強い思索と探求の軌跡をたどる。巻末には識者による多角的な論考も収録され、表現と社会の関係をより深く理解する手がかりとなる。
多様な時代における創作の意味を考えたいすべての人に、静かに響く一冊。
TRUE Colors—境界線の上で—
YA/101/ト
講談社
「女の子は将来ママになるもの」「女の子は甲子園に出られない」「元カレの好きな人は」「誰が家事をするのか」等、子どもたちの日常にある性にまつわるモヤモヤと、それに気づき、逃げずに向き合う姿が描かれるアンソロジーである。創作の世界であっても、現実とは地続きであり、世の中の多様性を知り、そこで起こる感情の動きを体験できる。
図書ラベルのYAはヤングアダルトの略で、大人と子どもの間、主に小学校高学年から中高生向けであるが、どなたでも。子どもの本などと思わず手に取ってみてほしい。
「ありのまま」の身体 —メディアが描く私の見た目—
05/フ
青土社
おしゃれを楽しむことや美容に励むことが推奨される風潮は、メディアの広告戦略やSNS等が影響している。本書は美の規範が進化する現代で“ありのままの身体”を肯定することの難しさを丁寧に分析している。見た目による重圧や偏見は、ボディポジティブ等のムーブメントによる画一的ではない美しさが示された現状でも変わらず、ありのままを愛そうという前向きなメッセージに潜む自己責任論に警鐘をならす考察は、見た目をめぐる葛藤を抱えている人の多様な悩みに寄り添ってくれている。ルッキズムという言葉に包含される問題は根深く、簡単には解決できないが、脱ぎ捨てられない身体を持つ私たちの見た目をめぐる希望と痛みは地続きである、と気づかせてくれる一冊である。
地方女子たちの選択
05/ウ
桂書房
地方から「若年女性」が減っていることが社会問題となってから10年、未だ解決はしないままだ。女性が減ると産まれる子どもの数が減るというが、それは「数」でしか見られていないからではないか。そもそも女性だけの問題なのか。
本書では、地方都市のひとつ富山で世代も環境も違う14人の女性たちが自身のライフストーリーを語る中で、地方都市での“生きづらさ〟や「女だから」と苦しんだり諦めたりしたことが多々みえてくる。著者同士の対談では、ライフストーリーを読み解き、女性を「数」から「生身の人間」へと解像度を上げていく。また、人口減少は、女性の問題ではなく社会の構造的な問題であり、社会に課せられた課題である。女性たちには自信をもっていろんな世界を見て、色んな選択肢の中から自分なりに納得のいく選択をしてほしいと語る。
働きたいのに働けない私たち
57/チ
世界思想社
本書に描かれている韓国女性の労働環境は、日本女性の状況によく似ている。長時間労働が当たり前の職場において、男性たちと同じように長時間労働を求められながら、子育てや家事も母親の責任として求められているような点である。
韓国の子持ち高学歴女性は労働市場から退場していく。なぜ韓国女性は高学歴であっても労働市場を離れることになるのか。
スウェーデンやアメリカの労働福祉政策との比較から、広い視点で何が韓国社会に必要か、個人の問題ではなく、社会の問題として、韓国の労働市場の歴史を踏まえながら確かめていく。
巻末には、日本の女性に向けた著者からの補論、専門家による日本の高学歴女性の現状についての解説もあり、日韓双方の女性の労働状況についても考察できる。
あなたのフェミはどこから?
05/ア
平凡社
文筆家、写真家、彫刻家、翻訳家、編集者、ライター、演出家、イラストレーター、学者、ソーシャルワーカー、精神科医など19名の著者が自身のフェミニズムはどこからきたのかについて、自らの半生に向き合ったエッセイ集。ベル・フックスの『フェミニズムはみんなのもの』を通じてフェミニズムを知り、しばしば感じていた生きづらさが解けていった著者も多い。どの読者もエッセイの中で自分自身を重ねる瞬間がきっとあるはずだ。多様な視点の中で共感したり、同感したり、時には違和感を覚えながら、自分もフェミニストであること、それが間違いではなかったことに気づくだろう。フェミニズムに出会い、繋がり、受け取り、そしてまた渡していく。そんな感覚を味わえる一冊だ。









