図書情報室

女らしさの神話(上・下)

女らしさの神話(上・下)

05/フ/1,2

ベティ・フリーダン/著

岩波書店

1920~30年代に高等教育を受けた女性たちの多くが専業主婦となり、主婦/妻/母という女の役割を“演じている”ことに気づいた著者が、「女はこうあるべき」という概念がはらむ欺瞞、女性たちの不安や不満について研究・調査し、“The Feminine Mystique”を著したのが1963年である。賛否両論あったものの大反響を呼び、第二波フェミニズムの引き金となった。1965年に『新しい女性の創造』として抄訳され、日本の女性にも大いに影響を与えたが、今般新たに全訳されたのが本書である。
原著の出版から60年。アメリカも日本も、女性の生き方、社会の在り方は変わった。それなのに、本書には今も「私のこと」のように感じさせられる。いつになったら古典になるのだろうか。

オタク文化とフェミニズム

オタク文化とフェミニズム

15/タ

田中東子/著

青土社

「推し活」という言葉に物珍しさを感じなくなった昨今だが、多かれ少なかれ「好き」な人物、対象、作品の存在はどの人のなかにもあることだろう。そんな「好き」を爆発させ、自身の経済活動を推し活に全振りする“オタク”の存在は、近年めまぐるしく変化するマーケティング戦略に大きな影響を及ぼしている。本書は主にアイドルを取り巻く環境とファンダム文化を土台に、「推す側」「推される側」双方の労働課題、それに付随する性的消費・性暴力の問題を内包しつつも“推さずにはいられない”女性のオタク的消費行動が現代社会に及ぼす影響をフェミニズムの視点から考察する。女装男子や、女性の自立、オタク行動におけるケアの視点にも触れられている事にも注目したい。

なぜ地方女子は東大を目指さないのか

なぜ地方女子は東大を目指さないのか

41/エ

江森百花、川崎莉音/著

光文社

日本は教育分野では男女平等な国だと感じている人が多い。実際、毎年世界経済フォーラムが公表するジェンダーギャップ指数においても、日本の教育分野の指数は146ヵ国中72位と、比較的問題はないように見える。しかし、実際はどうだろうか?
地方女子学生の進学支援を行う団体#YourChoiceProjectが、全国の高校生を対象として、地方/首都圏・女/男の間にどのような意識格差が存在するのかを明らかにする調査を行ったところ、首都圏以外に暮らす女子高校生は、顕著に偏差値の高い大学に進学することに対するメリットを感じていないことが判明した。その原因として、資格取得を重視する傾向、浪人回避並びに安全圏を志望する傾向、高偏差値大学合格に対する自己評価の低さなどが明らかとなった。
さらに、保護者も男子高校生と比較して難関大に進むことや首都圏へ行くことを望まず、周囲にも参考になるロールモデルが少ないことも、要因のひとつとなっている。
地方女子学生の選択肢を増やすためにできることは何か。丁寧な調査・分析と豊富なインタビューを基に考える一冊。

アメリカ合衆国連邦最高裁判事 ルース・ベイダー・ギンズバーグの「悪名高き」生涯

アメリカ合衆国連邦最高裁判事 ルース・ベイダー・ギンズバーグの「悪名高き」生涯

02/カ

イリーン・カーモン、シャナ・クニズニク/著 柴田さとみ/訳

光文社

「ノトーリアス(悪名高い)RBG」とは、著者のシャナ・クニズニクが開設した、ギンズバーグのファンサイトといえるブログのタイトルである。このブログをきっかけに世界的なRBG現象が巻き起こる。著者は、小柄なのに威厳と気品をもって活動する姿を“イケてるワル”という意味合いで「ノトーリアス」と評し、ギンズバーグ自身もこのニックネームを気に入っていたという。
本書は、女性として米国史上2人目の連邦最高裁判事であるギンズバーグが、87歳で亡くなるまで生涯をかけて女性排除、男女の賃金格差など、主に性別に基づく不平等の解消のために闘い続けた姿を、実際の裁判資料も紹介しながら描いている。

男はなぜ孤独死するのか ―男たちの成功の代償―

男はなぜ孤独死するのか ―男たちの成功の代償―

08/ジ

トーマス・ジョイナー/著 宮家あゆみ/訳

晶文社

“男性は女性に比べて自殺する率が高い”ことは、広く知られており、その要因の一つに“孤独”があげられている。浮かび上がってくるのは、社会的優位に立つがゆえの男性の脆弱性だ。
本書では、メンズ・ヘルスのエキスパートであり自殺研究の第一人者である著者が、自殺行動に関する科学的研究や心理学のエビデンスに基づき、なぜ、男性は孤独に陥りやすいのか、どうしたら孤独死を避けられるのかについて、ジェンダーに焦点をあてつつ考察している。
孤独は誰にでもやってくるが、孤独の格差は明らかに存在している。そこにジェンダーが作用しているとすれば、深刻な事態に陥る前にできることはたくさんありそうだ。

わたしたち、体育会系LGBTQです ―9人のアスリートが告白する「恋」と「勝負」と「生きづらさ」―

わたしたち、体育会系LGBTQです ―9人のアスリートが告白する「恋」と「勝負」と「生きづらさ」―

78/タ

田澤健一郎/著

集英社インターナショナル

日本のスポーツ界全体でLGBTQ当事者であることをカミングアウトしている数は少ない。その理由は、どこにあるのか。本書では、スポーツ界における性的マイノリティの人たちのこれまで世の中にほとんど届くことのなかった実体験や本音が語られ、日本のカミングアウトしづらい環境を浮き彫りにしていく。
LGBTQとスポーツのよりよい未来に向け、ジェンダーやセクシュアリティについて理解が深まり、性的マイノリティの人たちが活躍していることが当たり前になるよう、本書を通じて当事者の声に耳をすませ他人事でないことに気付いてほしい。