図書情報室
なぜ地方女子は東大を目指さないのか
41/エ
光文社
日本は教育分野では男女平等な国だと感じている人が多い。実際、毎年世界経済フォーラムが公表するジェンダーギャップ指数においても、日本の教育分野の指数は146ヵ国中72位と、比較的問題はないように見える。しかし、実際はどうだろうか?
地方女子学生の進学支援を行う団体#YourChoiceProjectが、全国の高校生を対象として、地方/首都圏・女/男の間にどのような意識格差が存在するのかを明らかにする調査を行ったところ、首都圏以外に暮らす女子高校生は、顕著に偏差値の高い大学に進学することに対するメリットを感じていないことが判明した。その原因として、資格取得を重視する傾向、浪人回避並びに安全圏を志望する傾向、高偏差値大学合格に対する自己評価の低さなどが明らかとなった。
さらに、保護者も男子高校生と比較して難関大に進むことや首都圏へ行くことを望まず、周囲にも参考になるロールモデルが少ないことも、要因のひとつとなっている。
地方女子学生の選択肢を増やすためにできることは何か。丁寧な調査・分析と豊富なインタビューを基に考える一冊。
アメリカ合衆国連邦最高裁判事 ルース・ベイダー・ギンズバーグの「悪名高き」生涯
02/カ
光文社
「ノトーリアス(悪名高い)RBG」とは、著者のシャナ・クニズニクが開設した、ギンズバーグのファンサイトといえるブログのタイトルである。このブログをきっかけに世界的なRBG現象が巻き起こる。著者は、小柄なのに威厳と気品をもって活動する姿を“イケてるワル”という意味合いで「ノトーリアス」と評し、ギンズバーグ自身もこのニックネームを気に入っていたという。
本書は、女性として米国史上2人目の連邦最高裁判事であるギンズバーグが、87歳で亡くなるまで生涯をかけて女性排除、男女の賃金格差など、主に性別に基づく不平等の解消のために闘い続けた姿を、実際の裁判資料も紹介しながら描いている。
男はなぜ孤独死するのか ―男たちの成功の代償―
08/ジ
晶文社
“男性は女性に比べて自殺する率が高い”ことは、広く知られており、その要因の一つに“孤独”があげられている。浮かび上がってくるのは、社会的優位に立つがゆえの男性の脆弱性だ。
本書では、メンズ・ヘルスのエキスパートであり自殺研究の第一人者である著者が、自殺行動に関する科学的研究や心理学のエビデンスに基づき、なぜ、男性は孤独に陥りやすいのか、どうしたら孤独死を避けられるのかについて、ジェンダーに焦点をあてつつ考察している。
孤独は誰にでもやってくるが、孤独の格差は明らかに存在している。そこにジェンダーが作用しているとすれば、深刻な事態に陥る前にできることはたくさんありそうだ。
わたしたち、体育会系LGBTQです ―9人のアスリートが告白する「恋」と「勝負」と「生きづらさ」―
78/タ
集英社インターナショナル
日本のスポーツ界全体でLGBTQ当事者であることをカミングアウトしている数は少ない。その理由は、どこにあるのか。本書では、スポーツ界における性的マイノリティの人たちのこれまで世の中にほとんど届くことのなかった実体験や本音が語られ、日本のカミングアウトしづらい環境を浮き彫りにしていく。
LGBTQとスポーツのよりよい未来に向け、ジェンダーやセクシュアリティについて理解が深まり、性的マイノリティの人たちが活躍していることが当たり前になるよう、本書を通じて当事者の声に耳をすませ他人事でないことに気付いてほしい。
バトラー入門
05/フ
筑摩書房
ジュディス・バトラー『ジェンダー・トラブル』(90年初版)は現代フェミニズム思想を学ぶ多くの人が読もうと努力するが、難解ゆえに“読んだ気になっている”人が多いようだ。本作は『ジェンダー・トラブル』自体の理論を理解するのではなく、執筆された80~90年代当時のフェミニズム界隈での動きや、LGBTQA+コミュニティの空気感。それらからバトラーが置かれていた環境を知ることで、バトラーの思想を考察するのだ。それでも難解であることは変わりないのだが、著者のくだけた文体はまるでフレンドリーで頼もしい山岳ガイドのようで、やわらかい思考で解釈するのを手助けしてくれる。バトラーの思想に初めて触れる方におすすめの、まさに「入門本」だ。
たぶん私たち一生最強
101/コ
新潮社
著者は、『くたばれ地下アイドル』で2015年に「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞してデビューし、本作が二作目である。
息のあう同級生28歳の女性4人が、ルームシェアをして一生4人で過ごすことを決意する。失恋したり、転職したり、自分のセックスに不安を覚えたり、病気になったり、みんな人生イロイロあるけど、「もう十年も二十年もたてば、今時男女で結婚とか古くない?って感じの社会になって…制度も整って、今よりずっと私たちが明るく仲良く暮らしやすい感じになってるよ。」と、あっけらかんと言い放つ彼女達は最強だ。多くの選択肢の中から葛藤しながらも自分で選び、自分らしく生きる。彼女達の姿に、これからの自分の人生の視野が広くなり、自由を感じることだろう。